さて、シリーズものを掲載するといいながら全く掲載していないので、そろそろぼちぼちと書いていきたいと思っています。
WEBプランナーの仕事は非常に広いのですが、一番難しいポイントは
「一般のお客さまの視点に立つ」ということです。
例えば女子高生向けの企画を考えるのであれば、
まず「自分の中の女子高生」を探す、ということです。当然、これは非常に難しいですが、最低限「わからないけれどもわからないなりにはわかる」というマージナルな状態である必要はあります。
具体的には下記のような状態で企画に当たることが必要です。
(1)関連雑誌をとにかく読む(立ち読み可)
(2)雑誌だけではなく、ムックやハードカバーなどの情報を収集する
(3)業界のカリスマについて知識を仕入れておく
(4)現場周辺の人の流れを見る
(5)ネットでの情報収集や今のニーズを探っておく
(6)体験している人の話をとにかく聞く
(7)現場に足を向ける
女性向け企画の場合は女性プランナーとの協同で仕事を進めることが多いのですが、
最低限上記の情報を仕入れておけば、ある程度太刀打ちができますし、どのような体勢をとっておけば良いかのリスク管理ができます。
ただ、その中で最後にして最も重要な
「(7)現場に足を向ける」ということができない場所があります。それが2003年当時(約7年前)のネイルサロンでした。
軽い気持ちで参加したこの企画で、当時新人の私は、稀有なランデブー体験をすることに
なったのです。それは人生の本質にも通じる部分がありました。たぶん。
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「世の中を動かしているのは女性で、金を出しているのは男性である。」
残念ではありますが、ひとつの事実です。資本主義社会における真理の一部です。
なぜクリスマスに世の男性はあれほど苦しまなくてはならないのか、なぜ誕生日プレゼントのために消費者金融のお世話にならねばならないのか、なぜバレンタインに「逆チョコ」という制度の可能性が言及され得るのか、理解はできませんが受け入れる必要はあります。真理だからです。
インターネット関連に関しては、当初は「男性の文化」(いわゆるオタクさんたちですね)だったのですが、ケータイの普及により、現在の市場性はおそらく6割位が女性市場なのではないでしょうか。
当時働いていた会社は元々女性社員が多かったため、女性向け企画が多数ありました。
その関連で、ある日突然、「ネイルサロンでヒアリングをしてくれない?」という指令が上司から下ったのです。
今でこそネイルは非常に一般的ではありますが、2003年当時はネイルアート自体がそれ程は社会的常識だったわけではなく、私自身も「爪に彫刻を施すアレですね」くらいの認識しかありませんでした。
イノベーター理論で表現すれば、「2.アーリーアダプター」が採用し始めたくらいの段階なのではないかと思います。
(C)yuriso
※「フォト蔵」で写真をお借りしました
当日、サロンへ入店。これまでの人生履歴を洗っても完全に未体験の場所なので、最初は何もかもが新鮮でした。
服装は普通なのに、何処か不自然にきらびやかな女性スタッフ。爪の魔力でしょうか。
絵の具のように周囲に陳列されているネイル用品たち。
化粧の香りを数段きつくした、室内に漂う薬品の匂い。
(C)yuriso
※「フォト蔵」で写真をお借りしました
しかし、1時間ほど室内にいてヒアリングとメモ取りをしていると、頭がぼうっとして、吐き気をもよおしてきました。
さらに15分ほどすると腹痛も併発し、本当に喉の辺りまで昼に食べた山菜うどんが込み上げて来ました。
「これは、ひょっとして…毒ガス!」
そう、ネイルサロンに漂う
強烈な化学薬品臭(ラッカーシンナー)にやられてしまったのです。
慣れない男性には結構あることらしいのですが、女性の美に欠ける意気込みは本末転倒です。
男性をこのような形でクラクラにするのはいかがなものか、ということです。
具合は時間とともに悪化していきました。
内臓全体が危険信号を発しています。機能不全になっているのでとにかく内容物を排出したくて仕方がないと言っているようです。
一瞬でも油断すると本当にリバースしかねません。
元々体調自体は悪くなかったので、ギリギリ我慢していますが、もう限界も近づいているように感じられます。
このような女性の園で、初めてのヒアリングで、突然リバース(嘔吐)をしたとしたらどうなるか。私は薄れ行く(?)意識の中でシミュレーションしてみました。
●この仕事は当然失注する
●上司から大目玉
●下手をすると仕事の激減
●ネイル恐怖症-->女性恐怖症-->対人恐怖症
●人生お先真っ暗
何一つとして良い仮定は浮かびませんでした。
打ち合わせに社内の人は3名いましたが、私はあくまで孤独でした。
他の人々がネイル談義をしている中、私はずっと
「ここで吐いたらどのように人生が台無しになるか」という想像を巡らせては、その後の自分を案じました。
そして、遂に心身の限界が訪れ、聞くは一時の恥と思い、トイレを借用を申し出ようとした時、知ってか知らずか、ネイルサロンオーナーは言いました。
「ここって、本当は男子禁制なんで、男子トイレがないんですよねぇ」
…それは私にとって究極の選択でした。
(A)恥を忍んで女性用化粧室(トイレではない。少なくとも表現としては)を借用する
(B)その場でエチケット袋を請求し、リバース
(C)死を賭けて我慢
(D)店外へ突如逃走
(A)と(B)、どちらかを選んだとしても喪うものは大きく、かといって(C)と(D)を選ぶには大変なリスクがありました。何故なら最早喉元まで例の物体達は進出していたからです。
--次回へ続きます--